地元に根付く工夫と価格に込められた思い(オクシィ 高田麻衣子さんインタビュー2/3)

前回はマフィスの名前に込められた思いやママが安心して働ける場所についてのこだわりについてお伺いいたしました。
前回に引き続き、仕事を諦めたくないママのためのシェアオフィス「マフィス」を提供しているオクシィ株式会社代表の高田麻衣子さんにお話を伺いしてきました。 今回のテーマは地元に根付く取り組みと価格設定について。働き方という観点以外にもビジネスとしてのヒントも満載です。

地元に根付く工夫

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櫻木:
マフィスの利用者としては、
弁護士・税理士・会計士といった士業、Webデザイナー、アプリ開発者、
スタイリスト、デザイナー、雑誌のライターや翻訳家、食育スペシャリストなど業種はバラバラと記事で拝見いたしました。
利用されるかたは地元の方が多いのでしょうか?

高田さん:
地元の方を中心に利用していただいております。世田谷区の方が8割、それ以外が2割ほど。それ以外の自治体では隣接している目黒区や川崎市の方が多いです。田園都市線一本で来ることができるからだと思います。
基本的には自転車や徒歩で来られるような近隣の方が多いのですが、認知度が上がってきてからは、電車やバスで来られる方も増えてきました。マフィスのような環境を必要としながらも近所にないためお車でお越しになる方もいます。
やっぱり子どもと一緒に移動するので、仕事道具だけでなく子どものオムツとか着替えとか荷物が多くなってしまうので、あまり商圏は広くないと感じています。

櫻木:
こうやって地元の人が8割を超える利用をされているわけですが、どのように集客はされたのですか?

高田さん:
最初は地元のママに優先的に知っていただきたいと思い、マフィス周辺の地域にチラシを配りました。
あとはエリアを絞って数回Facebook広告を出しました。ただ、これは開業当初の話で、この1年の広告費を算定してみたら13万円しか使っていませんでした。

櫻木:
13万円だけですか!すごいですね!

高田さん:
口コミや、女性活躍推進に関するイベントでの登壇、最近はメディアで取材されることが増えてきたので、メディアを通じて知っていただき来ていただける方が多いです。
大きなメディアに掲載されて知った方というより、ママ向けブログで紹介された記事をみてこられた方のほうが実際にマフィスを利用されている方は多いように感じます。

櫻木:
ブログを読んでいる方は、自分と似たような境遇で働いていることが多いと思うので、ブログの方にとっては今知りたかった情報だったんでしょうね。
マスメディアに掲載されると取材が取材を呼ぶという現象が発生すると思うのですが、その辺はどうでしょう?

高田さん:
先日取り上げいただいたNHKさんも、日経新聞さんの記事を読んでいらっしゃったし、そのときの日経新聞さんは、私がNTTドコモのイベントに登壇されたレポートを見て知ってくださったようで。

櫻木:
本当につながりがつながりを生んでいますね。
その他スタート期に集客はなにかされましたか?

高田さん:
最初はクラウドファンディングをやりました。
Makuakeさんを使いました。クラウドファンディングで資金調達ができなくてもマフィスやることは決めていたので、こどものおもちゃをもっと増やしたいとかもう少し機材を増やしたいとかアップグレードのための資金獲得と、先行販売的な意味合いではじめました。
ママ向けのシェアオフィスという業態から、地元中心となることは明らかでしたので、インターネットでのプロモーションより、地上戦が肝と判断していました。そのためネットに関してはあまり広告費をかけることが出来ませんでした。
結果としては300万円の目標に対して80万円程度しか集まりませんでした。しかしながら、今でも「保育付き シェアオフィス」などで検索すると上位にクラウドファンディングのプロジェクトページが表示されていたりしますし、テストマーケティングやプロモーションとしてはよかったと思います。
とはいえ、目標100万円ぐらいに設定してなんとか達成はしたかったですが笑

マフィスの利用料に込められた思い

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櫻木:
マフィスの利用の価格帯についてお伺いしてもよろしいですか?

高田さん:
いまマフィス馬事公苑で1番安い金額を39,200円に設定しています。定価は56,000円なのですが、運営の都合に合わせて融通を利いていただける方には安く提供しているプランです。
マフィスを利用されている方はほとんどこのプランを使っていただいています。
というのも、この3万円台というのが大事みたいで。
特に、フリーランスの方はコンスタントに、同じペースで稼ぎ続けることが結構大変で、仕事に繁閑の波がある方も多くいらっしゃいます。毎月負担なく支払い続けられる価格設定の下限としては3万円台が適切なようです。
以前、半分の時間帯(月20時間)の利用契約で20,000円台前半というプランも準備したことがありましたが、せっかくお子様が慣れてきたところなのに1ヶ月で解約、という方が続出してしまいすごく効率が悪かったんです。
20,000円台前半で20時間だけの自由を手に入れるということは、「まだどの程度稼げるかわからないけど」とか「とりあえず1ヶ月だけ払ってみよう」といったように、仕事に対するスタンスが受け身だったり、いまの仕事が終わったあとにどうするか迷っていらっしゃったりする方を呼び込んでしまうようです。なので、ちょっと始めてみて次の仕事が取れなかったら「あ、むりかも。」って思っちゃう。

櫻木:
わかる気がします。

高田さん:
そんなことで、あまり安いプランで提供するのも良くないと感じました。お子さんのことを考えても良くないんですよね。通ったり、通わなかったり。

櫻木:
環境が変わりすぎると、辛いですよね。

高田さん:
私たちは営利事業としてサービスを提供しています。現在は助成金を充てにすることができないため、安定したサービスを提供するためのコストを、ご利用者の方々にお支払い頂く必要があります。ご自身が子育てをしながらもプロフェッショナルとして質の高い仕事し、その成果にご満足いただくことを通して人生を愉しく豊かなものにすることがマフィスの存在意義であり、そんな生き方を志すママたちにご利用いただきたいというところベースとして、最低価格を設定しています。
すこし高飛車に聞こえてしまうかもしれませんが・・。
みなさま消費税や超過料金など合わせると、結局月々5-6万ぐらいお支払いされています。
「世田谷区の方だからこの金額が払えるんだ」と言われることも、多いのですが普通にフルタイムで0歳児を保育園に入れようと思ったら6-8万は払うと思います。いまこの瞬間はトントンだけど、キャリアを分断させないことに対する未来に対する投資だと思って、出産前と変わらずバリバリ仕事をされている方は、迷いなくそのコストを支払っていらっしゃいます。
マフィスのお客様は、都心勤めのフルタイムワーキングマザーと比較すると、時間的に緩やかな働き方の方が多い分、利用料に割高感はありますが、結果的に、短い時間で同程度の利用料をお支払いすることができる、プロフェッショナルの方々にご利用いただけており、大変うれしく思っています。

次回は最終回、「生活の質があがる子育と両立する働き方とは?」についてお話いただきます。


執筆者
櫻木 諒太
一般社団法人日本中小企業情報化支援協議会(JASISA)
中小企業支援をする公的機関勤務を得たのち、2015年10月よりJASISAのジョイン。
3つの組織に所属をし、成長意欲のある企業や地域の支援をする傍ら、時間と場所にとらわれない新しい働き方を実践中。
JASISA HP:www.biz-solution.org/
直近開催のイベント:
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